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RNRCミラー  

天空飛行船





爪の中の小さな月の正しい使い方

1.
 僕、学校帰りでとぼとぼと寂しい道歩いてたら、通りがかった公園でブランコに乗って独り、けだるそうにゆらあり揺れている高校生ぐらいの女の子を見つけた。彼女が着ているのは見たことのない制服で、あれはどこの高校だっけ、近所の第三中学校は紺色の制服だから茜色のあれは違うしなあ、それにしてもかわいい子だなあ、整った顔立ちで、うつろな目をして遠くを眺めている、一体どこを見つめているんだろうなあなんてぼんやり考えていると、いきなり振り向いた彼女と目が合った。

2.
 びっくりしてこっちから目をそらしてしまったけれど、それでも夕陽に照らされた彼女の顔が忘れられなくて、僕は見つからないようにもう一度彼女をちらちら観察する。膝下五センチぐらいのスカートからのぞく白い脚、しわ一つない真っ白な靴下、いいなあ、あんな彼女ほしいなあと、両手を思いっきり伸ばしてあくびをしながら考えていたら、いきなりぴょんとその子、ブランコから飛び降りて、僕のほうに駆け寄ってきた。

3.
 あわてて僕、近くに隠れる障害物がないか探す。とっさに公用のごみ箱を見つけて飛び込もうとしたけれど、それよりも彼女が僕に追いつくほうが先だった。「ねえあなた、さっきから私のことちらちら見ているけれど、なんか用?」「いやべつに、なんにもないよ、ほんとだって」しどろもどろに僕は弁解する。「嘘、見てたの知ってるもん」「そんなこと言われても」「あなた名前なんていうの、教えなさいよ」「名前なんか聞いてどうするんですか」「いいから教えなさい」仕方なく僕、自分の名前を彼女に教える。一瞬のタイムラグを置いて、彼女の表情に変化が訪れた。

4.
「どうしたの」僕は聞いてみる。「僕の名前に何か」「ええと、あのね」彼女はさっきまでの僕みたいにあたふたと喋る。「わたしね」「うん」「実はね」「うん」「今日からあなたの家に、住ませてもらうことになってるんだよね」「へえそうなんだ」「そうなのよ」「大変だね」「そうなのよ」「えええええ」

5.
 そこからずっとついてくる彼女に僕は尋ねる。「本当にもう決まったことなの? 僕父さんからも母さんからもそんな話全く聞いてないんだけど大丈夫?」「うん」「寝るところはどうするの? 僕の家そんなに広くないよ?」「ついてから考える」「食事は?」「一緒に食べる」「学校は?」「一緒に行く」「お風呂は?」「それは一人で入ります」ひとしきり質問も尽きたところで黙ってしまう僕と彼女。困ったぞこれ、大丈夫なのかこの子、電波ゆんゆん、お花畑の見えている子なのか? もしかして。

6.
 しかしそんな気まずい帰り道も永遠に続くわけもなく、僕の住むおんぼろアパートが見えてくる。「ここがまあ僕の家。とりあえず、さっぱりはえない家だけど、まあどうぞあがって下さいな」「ありがとう」玄関で二人そろって靴を脱ぐと、僕は半信半疑で「母さん、なんか、今日から僕の家で一緒に住むことになったらしい女の子が来てるんだけど」大声で居間に向かって叫ぶとしばらくしてから割烹着きた母さんが出てきて「いらっしゃい。よく来てくれたねえ」と、うれしそうに彼女を眺めた。

7.
 そういうわけで、どういうわけだか分からないけれど、事情を承知しているらしい母さんと一緒に三人で晩御飯を食べていたら、父さんが珍しく早く帰ってきた。「おかえり。早いね」僕が言った月並みな言葉を無視して父さんは「おお、よく来たね、かえでちゃん」と言った。かえでちゃん? 「こんばんは、このたびは本当にありがとうございます。わたしみたいな者を泊めていただけるなんて感謝してます」「礼はいいんだよ、さあ食べよう」父さんは言いながら食卓に着くと、僕の方を見てさらに言った。「さて、うちには部屋が少し足りない。かえでちゃんは、お前の部屋で寝かせてあげなさい」
 意味が分からない。僕の寝る場所は? 「ありがとうございます」とかえでちゃん。僕は慌てて「はあ? 僕はじゃあどこで寝るわけ?」「廊下」「ろうか?」「ろうか」「そうか」はあ?

8.
 夜、冷える廊下にひいた布団の中で僕は考える、あの子は一体誰なのか。夕方あの時たしかに僕とあの子は目が合った。普通ならそのときに僕に話しかけてくるんじゃないのか? なんでわざわざ何回も目が合って、気まずくなってから話しかけてくるんだろう。ふっとひらめくその瞬間、僕の頭にある仮説、あんな彼女欲しいなあと思ったところでいきなり彼女がブランコから飛び降りたのではなかったか? もしかして、これは僕の内奥から来る煩悶の実体化、簡単に言うと欲望のリアライズ、つまるところ僕が望んだことが現実になっているのではないのだろうか?

9.
 僕は必死に夕方の状況を思い起こしてみる。あの時あの状況、どうやったら彼女がブランコから飛び降りたんだったっけ? 確かあの時僕は頭の中で彼女が欲しいと思っただけだったはず、考えただけで願い事がかなうなら、いま僕はこんな寒い廊下で寝ているはずがない。ああ、自分の部屋で寝たい、僕は願うけれど、その願いは当然のように叶わない。一体、夕方願い事が叶ったときと、今願い事が叶わないこの状況との違いは何なんだ? あ、両手。

10.
 あの時僕は、両手をあげて、あくびをしながらそういうことを考えていたんだった。両手を天に差し出す。なんとも宗教的なにおいのする行動だ。これに違いない、ああ、僕は、僕の部屋で、彼女と一緒に眠りたいのです、神様。両手を差し出しながら、僕は精神を統一する。瞬間、僕の部屋のふすまが開く。パジャマを着たかえでちゃん。キタ。

11.
 妙な格好をした僕に不審そうな目を向けることもなく眠そうな顔でかえでちゃん、「トイレ、どこだっけ?」「ああ、そこの廊下の二番目の扉がそれだから」「ありがとう」用を済ませたかえでちゃんが帰ってきて僕の布団を横切る。「ねえ、そこ寒くない? 代わろうか?」「いや、いいよここで」「でもなんか悪いよ」きたきたきた。「ほんと平気だって」「そんなこと言っても……じゃあ、布団二枚敷こうか。ちょっと窮屈だけど、大丈夫でしょ?」「だいぶ窮屈だよ。僕の部屋見ただろ、物だらけなんだから」「いいよ、無理やり敷けばいいじゃない」「そう? 年頃の女の子と一緒に寝るのは気が引けるなあ」断れないと分かっていてそういうことを聞く僕。「いいもん、おかしいことをされそうになったら大声出すから」「ああそうですか」ああそうですか。

12.
 すやすや寝息をたてている彼女の隣で、僕は考える。ここでまた両手をあげて、彼女と一緒にいろいろとそういうことをしたいと願うのは簡単だ。だけど、どうにも話がうますぎる。いったい、願い事が無償でぽんぽんいくつも叶うなんて話があるだろうか。絶対に何らかの代償が損なわれているはずだ。よく考えろ。何か無いか。天に差し出した手か? 手の指が生贄に差し出されている? だけど僕の両手にはちゃんと五本ずつ指がある。10までだったら難なく数えられるし、二進法を使えば両手で1023まで数えられる。却下。他にないか? 爪? 爪だって、全部生えてる。そろそろ切らないといけないほど伸びてきてるし、その爪の付け根にはちゃんと半月の形をした白い爪半月が、──あれ? ない。

13.
 爪半月が綺麗に消えてなくなっている。右手の親指と人差し指。何これ。呪いかな? だけど痛くもかゆくもないし、こんなんで願い事が叶えられるなら、願ったり叶ったりだ。だけど、僕は少し、考える。僕は小指と薬指に爪半月が無いから、右手と左手で都合六個の爪半月があるわけだ。そのうち二つをすでに消費してしまったということは、残数は六マイナス二で四。一生で叶えられる願い事の総数としては、あまり多いほうとは言いがたいだろう。大事に使わなきゃ。こんな、今日知り合ったばっかりのよく分からない女の子と、あれこれ布団の中でやるなんてことに使っちゃったら、もったいないにも程がある。そんなことよりも、たとえば世界人類が平和でありますようにとか、そういうことを僕は願うべきなんじゃないのだろうか。

14.
 だけど隣の彼女、やっぱりかわいいなあ、何とかできないかなあ、ああそうだ、僕やっぱり天才だ。両手をあげて、どこの誰だか知らない僕の神様、願い事、聞いてください。僕の爪半月、もう一度六個にしてくれませんか? 古典的な手法だね。悪魔が出てきて言いました。三つだけ願いを叶えてあげましょう。農民は言いました。一つ目の願い事、叶う願い事を百個に変えてください。僕はしばらくしてから自分の爪を見てみた。右手の中指の爪、左手の親指の爪、何事もなかったかのように一面、ピンク色で。そういう願い事はタブーだったらしい。4-2=2。神様に怒られた。

15.
 さあ困ったことになった。あと二つ。一体僕は何を願えばいいのだろうか。どうしよう、あたたかい布団で女の子の気配を隣に感じながら僕は邪悪な考えをめぐらせる。手はいろいろと考えられる。単一の願い事にたくさんの望みを包含させるというのが一つの方向性だ。例えば、「お金持ちになれますように」と願うよりも「幸せになれますように」と願うほうが、神様が勝手に願いを解釈していろいろな幸せを運んできてくれる可能性が高くなる。その幸せに「金持ちになる」という項目が入っていたとすれば、前者の願いは後者の願いに包含されるという按配だ。問題は、神様はそのへんの機転が利くのかということだ。生きていることに感謝する気持ちが得られたって、僕はうれしくない。僕に必要なのは、目に見える圧倒的な幸せなのだ。御伽噺に出てくる、遠い国の王のような──

16.
 かえでちゃんに起こされる。いつの間にか寝てしまっていたらしい。寝ぼけ眼でパンをかじり、身だしなみもろくに整えずに家を出ると、通学路を歩いている時点ですでに周りからすごい視線を感じた。そりゃそうだ。こんなにくっついて歩いてたら誰だって振り向く。しかも僕のようにずっと独り身だったさえない男がそんなことをやっているんだから。
「ねえ学校行くんだからもうすこし離れて歩こうよ」「なんで? わたしあなたの彼女じゃなかったの?」「いやまあそう願ったけどさ」「願った?」「いやなんでもない」「離れて歩いてたら変だよ」「そうかな」
しばらく歩いていると横断歩道の向こう側に悪友を見つけた。やばい、こんなとこ見られたら教室で何言われるかわからない。「ねえ違う道通っていこう」「なんでよ」「近道知ってるんだ」「うそ、だってこっから学校までほとんどまっすぐじゃん」「ねえ頼むからもう少し静かにしゃべってくれないかな」「なんでよ!」だめだ、こんなにわあわあ騒いでいると──案の定、ずっと前で歩いていた友達が振り返る。あえなく見つかる僕。目を見開く奴。奴の驚愕した顔は面白かったけれど、こっちに駆けてくる奴を見てどうしようもなく憂鬱になる。僕たちの目の前まで来て息を切らせながら奴は、僕におはようも言わずに吠えた。
「あ、あの、は、はじめまして私はあなたの隣にいる醜い男の唯一の友達です。ところであなたはどなたでしょうか?」
かえでちゃんは即答する。
「その彼女です」
奴は目を白黒させて泡を吹く。泥沼だ。

17.
 最悪の一日だった。担任はかえでちゃんを僕の隣に座らせるし、クラスメイトからは白い目で見られるし、社会の先生は僕を目の敵のようににらむし、弁当の時間は周りが気を使って──面白半分に、とほぼ同義だ──ぼくとかえでちゃんを二人きりにさせるし、ホームルームの時間は……思い出したくもない。
 とにかく、この状況を改善するために願い事の一つや二つ、消費してもよいのではないかという考えが僕の中で固まりつつあった。
「どうしたの?」「いやなんでもない」「考え事してなかった?」「してた」「もうなんで黙ってるのよ言いなさいよ」ああ鬱陶しい。なんで僕が考え事をしてるなんてことがすぐに分かるんだ。思わず目を逸らす。逸らした先に不吉な影が見える。「ねえなんとか言ったらどうなのよ」「そんなことよりね」「なによ、話逸らそうって言うの?」「いや、そうじゃなくて、あのね」「うん」「前を見てごらん」
 僕たちの前から歩いてくるガラの悪そうなお兄さんたち四人。今日の僕は厄年の親父の軽く十倍をいく不運らしい。

18.
 僕は地面に横たわって体中の鈍い痛みに耐えていた。昼間からいちゃついてんじゃねえよというのが彼らの論理であり主張だった。彼らは鮮やかな手順ですべてを淡々とこなした。二人がかえでちゃんを拘束し、一人が僕を羽交い絞めにし、残りの一人が僕を殴った。彼の拳は正確に僕の腹を襲った。一発一発が機械のように同じ強さだった。まるで彼は一貫した哲学に従って人を殴っているかのようだった。僕が抵抗できなくなるまで弱った時点で、彼らはもういちど四人そろい、僕につばを吐きかけると、振り返りもせずにかえでちゃんを連れて去っていった。
 僕は息も絶え絶えになりながら傷だらけの手を空に向かって伸ばした。

19.
 本当に何が起こったのか分からなかった。それまで晴れていた空がいきなり暗雲に包まれ、一分もしないうちに雨が降り、さらに五分もしないうちに雷がものすごく近くに落ちた。まさかと思ってぼろぼろの体を奮い立たせ、表通りに出てみると、彼らが四人そろって黒焦げになっていた。僕自身、何を願ったのか自分でも理解していなかったけれど、こんなことは想像の外としか言いようがなかった。真ん中で無傷のかえでちゃんがぽかんとして立っていた。僕は駆け寄る。
「大丈夫だった?」「え? ──ああ、うん」「何が起こったの?」「大体分かるでしょ。雷が落ちて、四人だけ感電して、私だけ無事だったの」「へえ、それはよかったね」「……」
 かえでちゃんは何も言わずに僕の左手を両手で取って愛しそうに見つめる。僕の心臓が飛び跳ねる。ばれてる? まさか──しかし彼女は僕の爪を丹念に調べ始める。もう中指だけになってしまった爪半月。なんで知ってるんだろう。僕しか知らない願い事の秘密。それを見つめる彼女の目が暗く澱んでいるのが、僕の不吉な思いをひどく増幅させた。

20.
 彼女が風呂に入っている間、僕は僕の部屋で彼女の不可解な行動について考えている。あのときの行動は明らかにすべてを知っている行動だった。どこでばれたのだろう。最初から知っていた? 途中で気づいた? まさか彼女自身が願い事を叶えている──? とにかく、最後の一つの願いだけは慎重に使うべきだ。僕はまだすべての爪半月がなくなったときにどうなるかを知らない。そんな状況で次なる願い事を叶えようなんて、危険にもほどがある。
 彼女が風呂から出てくる音が聞こえて、僕はあわてて思考を閉ざした。なんだか僕の考えてること、彼女に筒抜けのような気がして。

21.
 彼女は湯気を上げながら僕の部屋に入ってきた。バスタオルに身を包んだ彼女に少しどぎまぎする。そんな僕をじっと見て彼女は「なるほど」と言うと、独りでうなずいた。「あなたもそろそろ爪の異変に気づいて悩み始めているころでしょう」ぎくり。
「そりゃ気になるわよね、あと一つだもんね、不良からわたしのこと助けてくれたんだもんね」「ねえ、かえでちゃん、悪いけど何の話か分からないな」苦し紛れの言い訳をする僕。「隠しても無駄だから観念しなさい」「何か別のことと勘違いしてるんじゃないの? あと一つってどういうこと?」「爪の裏側にもう一つある白い半月型の爪」だめだ、やっぱりばれてる。僕はあきらめて最後に聞きたかったことを口にした。「なんでそれを知ってるの?」ちょっと間をおいて、彼女は言う。
「あなたの願い事、叶えてたのわたしなんだから」
──なにこの展開。

22.
「わたしがって言うと少し語弊があるんだけどね、ようするにわたしは魔界のそういう願い事を叶える系の部署との連絡係になっているわけよ」かえでちゃんは淡々としゃべるけれど、僕にはその意味が半分も分からない。静かな夜で、彼女のしゃべり声以外は時計の針の音しか聞こえない。「ほら、ここって地球だから、あっちの人も、こっちの人が何を願ったかなんてすぐに伝わるわけじゃないのよ、そこでわたしみたいな情報伝達係が必要になってくるわけ。あっちとこっちと行き来して、地球の人がこれこれこんなことを願っていましたよってことを伝えに行くのね。伝えに行くって言っても物質的に行くわけじゃなくて、精神だけが遊離して飛んでいくわけだけど。幽体離脱って言うのかな、こっちの言葉だと」「で、その部署に何故か願いを叶えてもらうことになったのが僕ってことか」「そういうこと」「なるほど」「わかった?」「わかった」
「で──」彼女は僕の顔を覗き込む。「あなたなんだか冴えない顔をしてるわね、また何か叶えたい願い事があるんじゃないの? というかわたし、お風呂の中であなたの願い事、聞いちゃったんだけど、あなた手上げてないから叶えられないのよね。爪半月全部使っちゃったらどうなるのかってことでしょ? そんなのすぐに分かるんだけどなあ」全部お見通しというわけだ。彼女に僕の考えを見透かされている気がたびたびしたのはこのせいらしい。「本当?」使い切ったあとに起こるペナルティが耐えられそうなものであれば、僕は後一つ願い事が叶えられるわけだが。「どうすればそんなことが分かるわけ?」僕は聞くけれど、彼女はそれには答えずにひょいと僕の腕を持ち上げる。
「ほら、こうするだけであなたの知りたいことは全部わかる、そうでしょう?」あっ、ちょっ、ちょっと──

23.
 反射的に手を元に戻したときにはもう遅かった。かえでちゃんがにっこりと微笑んでいる様子が目に入ったのと、僕の爪が──爪半月ではない、爪自体が──すべて消え落ちたのがほぼ同時で、その後の数瞬は何が起こったのかもわからずに僕はぽかんと口をあけていた──が、何も考えずにいられたのはそれまでで、すぐに脳天に突き抜けるような鋭い痛みが両手の末端から一挙に僕を襲った。願い事がかなってしまったのだ。爪半月がすべてなくなってしまったあとどうなるかを知りたいという僕の望みが成就して、ものすごい勢いでこれから起こることについての記憶のような何かが僕の頭の中を駆け巡った。さまざまな地獄が僕の目の前をどんどん通り過ぎて消えた。それは目を覆いたくなるような光景で、でも目で見ているわけではなく脳内で再生されている映像なので見ないわけにはいかなくて、僕は苦しさに耐えかねてのた打ち回った。部屋で暴れる僕の両手からは血が噴き出して床を汚し、そんなものを止める暇もなく僕はひいひい呻いた。そんな様子を見ていたかえでちゃんはやがて、僕の目をまっすぐに見つめて「よかったね」とそう言うと、僕の右手をあの時のように両手で持って、一本ずつ指を撫で回す。僕は痛くて飛び跳ねる。「ほら、こうすると痛くないよ──」かえでちゃんはどこから持ってきたのかナイフを取り出して、僕の指の付け根にあてがった。「指なんて、切っちゃえばいいのよ、そうすれば爪の痛みなんて脳まで届かない」それはおかしな理論だと思うけれど僕はショックで声が出せない。「だめだよ、動いちゃ、じっとしなさい。親指が一番痛いのよ。その後は比較的緩やかな痛みだから大丈夫」僕は暴れるけれど、どこからそんな力が出てくるのか、かえでちゃんはびくともしない。ナイフを持つ手に力がこもる。僕の体がこわばる。夜の十二時を僕の部屋の時計が知らせる。ひんやりとした、ひそやかな夜。彼女は静かに、しかしはっきりと僕にささやいた。
「いくよ──」

 

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